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ルビーのお話 [アンティーク]

ルビーはなぜ赤いのでしょう?

永遠に消えることのない炎が石の中で燃え続けているから

古代インドの人たちはそう信じていました。残念ながらこれは不正解ですがルビーの赤い輝きをながめていると彼らが「炎の石」と呼んでそう信じていた気持ちがとてもよく分かる気がします。では本当のところなぜルビーは赤く輝くのか?それは酸化クロムの混じったコランダムだからです。

コランダム(鋼玉)・・・“ルビー”に比べるとそれほど響きが美しくはありませんが、「赤いコランダム」をルビーと呼びます。では青いコランダムは?そうサファイアです。サファイアのお話はいずれするとしてルビーとサファイアは色が違うだけでどちらも全く同じ石、コランダムです。

別な元素の混じっていない純粋なコランダムは無色透明ですが無色なものは案外少なく、鉄やチタン、クロムやニッケル等の混入によりピンクやイエロー、グリーンやオレンジなどに色づきます。全て色ごとに「〇〇サファイア」と呼ばれますが1783年にルビーとサファイアが同じ化学組成と結晶構造をもつ石であることが判明して以後も、ルビーはレッドサファイアと呼ばれることなくルビーという独立した名称で呼ばれています(特別な名を保持すものには他にピンクがかったオレンジ色に輝くパパラチアがあります)。

無色透明のコランダムにどれくらいの割合でクロムが混じると赤い色に輝くのでしょうか?実は僅か1~2%程度です。では含まれるクロムの量が多ければ多いほど赤い色が綺麗になるかというとそうではなく、5%以上になると一転して暗い灰色となってしまいルビーと呼ぶことができなくなります。宝石としての価値は全く無く、鋼玉の名が示す通りダイヤモンドに次ぐ硬度を誇るので研磨剤として使用されることになります。

カラーサファイアがそれぞれの色ごとに〇〇サファイアと呼ばれる中、ルビーだけがそのままの名前でいられたのはその希少性に理由があります。東アフリカの一部(マダガスカルなど)を除けばアジアでしか採れず(最上とされるのはビルマ=ミャンマー)産出量は同じコランダムであるサファイアはもちろんダイヤモンドよりもはるかに少なく(ダイヤモンドの1/30程度)、色のついた宝石でカラット当たりのルビーの価格を超えるのは非常に希少なピンク、ブルー、グリーンの各ダイヤモンドだけです。

ルビーという呼び名が一般的になったのは14世紀に入ってからですが、ヨーロッパでは採れないにも関わらず既に古代ギリシャの時代からその存在を知られていました。ギリシャでの呼び名は「アンスラックス」、古代ローマでは「カンブンクルス」と呼ばれ、呼称は違いますが意味するところはどちらも同じで「燃える石炭の炎」です。ただし古代ローマでは「赤くて硬い石」をひとまとめにしてカンブンクルスと呼んでいたため、実際にはルビーの他にスピネルやガーネットなども含まれていました。特にスピネルはルビーとよく似ており、区別することは当時としてはそれほど困難だったのです。ちなみにスピネルが発見されたのは16世紀のことですが一般的な認知にはほど遠く、18世紀の終わりくらいまで両者は区別されることなく混同されていました。イギリス王室の王冠に使われている宝石の中でもっとも古いもののひとつ(14世紀。それ以前の所有者はスペイン王)である有名な「黒太子のルビー」がスピネルなのにルビーと呼ばれていたのはそのためなのです。

話は少しそれましたが古代ローマ以後もダイヤモンドの加工技術が確立するまでヨーロッパで最も尊ばれていた宝石はルビーでした。ルネッサンス期にはダイヤモンドの8倍もの値で取引されたとの記録が残っています(ちなみにエメラルドも価値が高く、ダイヤモンドの実に4倍でした)。

ルビーがどれだけ価値のある宝石か、あらためてそのことに思いをはせていただけたならうれしいです。そしてアンティークのルビーには歴史と共にもうひとつ大きな価値があります。それは熱処理をしていないということです。現代物のルビーはそのほとんどが熱処理をされています。熱処理はほとんどタイで行われ、酸化クロムの他に鉄を多く含むためブラウンがかったタイ産ルビーも熱処理をすることでルビーといえば直ぐに思い浮かべるあの鮮明な赤色になるのです。熱処理をせずに原石を研磨するだけで鮮明な赤色を出せるのはビルマ(=ミャンマー)産の中でもピジョンブラッドと呼ばれる最上級のものだけです。

今月は7月、七夕の季節ですね。星は夜空に浮かぶものとは限りません。地上にも赤く輝く星、ルビーがあります。短冊に願いを書くようにルビーにあなたの願いを込めてみませんか?ルビーは7月の誕生石です。きっと願いをかなえてくれることでしょう。
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asty

ルビーの赤は見ていると元気になります。
by asty (2012-07-06 20:13) 

Extar15

asty様

こんばんは、コメントをしていただきありがとうございます。ルビーには何色の光を当てても赤く輝くことができるという特性があります。きっとそのこともルビーの赤を見ていると元気になる理由のひとつだと思います。
by Extar15 (2012-07-06 21:08) 

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