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History & Story [アンティーク]

つい最近、古い一眼レフカメラを新しく手に入れた。レンズも付いてお値段なんと1,600円!カメラもレンズも不具合は一切無く、フィルムを入れればそのまま即撮影に使えるちゃんとしたカメラなのにこのお値段・・・。安く手に入れられたという単純なうれしさもあるけど、小学生でも買えるような価格になってしまったことが正直とてもさみしいし悲しい。

カメラといえばデジタルの世の中で、フィルムを使って写真を撮る僕の様なひとは物好きな趣味人かもしれない。でも壊れているのなら別だけどちゃんと動くものがこの値段だなんて正直いいことじゃない。もちろんただ写真が撮れて、しかも撮影の結果を直ぐに見たい人には不便で面倒で何の価値もないものだろう。でも僕はものを単なるものとして見ることができない。そのストーリーを考えてしまう。このカメラでいえば設計した人達、工場で実際に作っていた人達、そして僕が手に入れる前にこのカメラを使っていた人達。みんなそれぞれに思いがあったはずだ。忘れられない思い出も。もう45年も前のカメラだから関係者の方も高齢になっているだろう。でもそんな人たちが旅先や街のどこかで自分が作った、使っていたカメラが元気に動いて今でも写真を撮るのに使われている、そんな姿を見たらきっとうれしく思ってくれると思う。

価格と価値は人によっても違うからイコールではないと思う。でもそれを決める側でいる方はけっこう難しい。僕が自分のアンティークショップで販売している品はけっこう値段に幅がある。一万円以下で買えるものからそれなりに値段のするものまで。高く売りつけるような趣味は無い。でも安くしすぎにも出来ない。新しいものでも半世紀は経っているし、古いものならそれこそ190年近く前のジョージアンのアンティークまである。

アンティークジュエリーをオーダーした人のロマン。時間も費用も手間も全て無視することが許されたことによって想像力に創造力で応えた職人の技。そしてそれを身に纏うことによって活かし続けてきた歴代の女性達のセンス。その人たちの思いや歴史を考えたなら、あまりにも安い価格は失礼だ。でもあまりに高くて手が出ない価格にもしたくない。僕はその中庸を目指してる。

明日をも知れぬ不景気な世の中かもしれない。いいなって思う気持ちがあっても動きたくても動けないかもしれない。プチプライスなアクセサリーだったらいつでも簡単に手に入れることができるし・・・。でもあなたにはできることならアンティークジュエリーを手にとって、そして身に着けてもらいたい。余裕ができたら手に入れるというかもしれないけれど、手に入れることによってこそ余裕は得られるものだと思う。そしていつかあなたの大切な人に受け継いでいってほしい。それからずっとずっと時間が経てば、いつかはあなたにとって全く関係の無い、全然知らない人の手に渡っていることもあるかと思う。僕がヨーロッパからこの日本に持ってきたように。でもきっと、あなたが大切に思っていた気持ちがそこには残っている。だからこそずっと大切に受け継がれていく。これから先100年、200年と、人から人へ思いを、歴史を伝えていってほしい。

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