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ムーンストーンのお話 [アンティーク]

*昨日の続きです

「ムーンストーンは何でできているの?」その答えについてです。「長石」を御存知ですか?「長芋のようにいつも細長い状態で採れる石」ではもちろんありません。私たちが住んでいる地球の表面は「地殻」と呼ばれ、地殻は各種の岩石で成り立っています。この「地殻の岩石」を構成する鉱物を「造岩鉱物」と言い、長石はその中で最も存在量の多い鉱物です。

ただし長石とはそれ単体を指す言葉ではありません。「〇〇長石」といった各種長石グループの総称で、長石類の中でも特に美しいものだけが宝石として区別されます(月長石:ムーンストーン、日長石:サンストーン)。地殻に普遍的と言えるくらい多く含まれる長石ですが、宝石として輝けるものはほんの一握りだけなのです。

昨日後述しますと書きました「シラー効果(ドイツ語で煌めきを表すSchillerが語源です)」はムーンストーンが長石の仲間であることから発揮される特殊な光の効果です。ムーンストーンはカリウムを多く含む正長石の層とナトリウムを多く含む曹長石の層が交互に重なり合った層状構造になっています(お菓子のミルフィーユをイメージするとよく分かるかと思います)。

1 ムーンストーンに光が入る

2 入った光は性質の異なるものが相互に重なる層構造によって干渉を受ける

3 干渉による光の散乱が起こりムーンストーンの表面下にふわりとした青白い光が浮かび上がる

これがシラー効果の基本です。曹長石の層が薄いと青い光が強く、逆に層が厚いと白い色が強くなります。ムーンストーンの中でも特に青いシラーが強く綺麗に現れる石はブルームーンストーンと呼ばれ希少価値があります(主にスリランカ産)。ただしシラー効果は原石そのままでは見ることが出来ません。きちんとカットを施して他の宝石同様研磨する必要があります。原理を知ることのできなかった古の人はシラーの現れるムーンストーンに美しさと共に不思議な力を感じていたのでしょうね。

ところで話は全然変わるのですが筆者はふと考えました。「月にムーンストーンはあるのかな?」

そこで調べてみました。結論から言うと(まだ見つかったという話は聞いていませんが)あると思って間違いないでしょう。何故か?月の地殻にも地球同様長石が高い比率で存在しているからです。ムーンストーンも長石のグループなのですからきっと発見されるはずです。いつの日か未来の地球では月から採られたムーンストーンでジュエリーが作られていることでしょう。できるなら僕が生きている間に実現してほしいものです。

現在手に入れることのできるアンティークのムーンストーンはヴィクトリア朝後期以降のものが多いです。店主が出品しておりますネックレスは次代のエドワーディアンの頃のもので、カボッションカットされたムーンストーンの周りを銀の(金の場合もありますがムーンストーンと相性が良いのはやはり銀です)フレームワークで一つずつ囲み、それをつないでネックレスにするというこの時代の特徴を見ることができます。連なるムーンストーンの間に小さなアメジストを配した作品や、デコルテに沿ったラインのフレーム間にもうひとつドロップした縦のラインにムーンストーンを配した作品もありました。最初から最後までムーンストーンが連ならず途中から普通の金のチェーンになっている長さの短いものも見たことがあります。ひとつひとつがオリジナルの1点もの。時代的特徴に共通性はあっても似たり寄ったりというような安っぽさは無い。アンティークならではです。店主はムーンストーンそのものの美しさを感じさせてくれるシンプルなラインで、余計なものはついておらず最初から最後までムーンストーンが連なっている作品を求めていました。同じ思いを抱いてくれる方に歴史を受け継いでいただけたなら・・・とってもうれしいです。

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