真珠採り [アンティーク]
1920年代になって、日本から養殖真珠が輸入されるまではヨーロッパでジュエリーとして愛された真珠は全て天然真珠でした。紅海、アラビア海、そしてスリランカ沖のインド洋で危険と隣り合わせの、それこそ命がけの真珠採りが行われていました。海に潜ったとしても必ず真珠に出会える訳ではもちろんありません。大きさや形はもちろん、そもそも真珠が形成されているかは貝を開いてみなければ分かりません。だからこそ真珠採りは日に何度も何度も海に潜るのです。
鉱物は人の手で磨かれて初めてジュエリーとなります。それに対して(天然)真珠は人が手を加えなくても最初からそのままで輝きを放つことができる唯一のジュエリーです。最初から最後まで人為的に手を加えられた養殖真珠とは決定的な差があるのです。
真珠を形成するにあたっては貝の中で真珠層が重なりあうための異物(核)が必要になってきます。天然の場合は核は非常に小さいものであることが多く、また核そのものが無い場合もあります。養殖の場合は初めから大きな真円の人工核を入れるので半年もすれば真珠になるのです。でも例え大きくて真円であっても、天然のように何年もかけて真珠になるのとは違い養殖真珠の真珠層は必然的に薄いものなのです。
真珠層は無職透明ですが、真珠層を接合する為に一緒に出される分泌物と中心の核には色が有ります。実体としてある色と無色透明の真珠層が数千層以上に重なり合い、入ってきた光は複雑に反射を繰り返します。これが真珠の輝きの秘密なのです。真珠層の薄い養殖真珠はこれをカバーするために漂白や染色で色の調整をしています。天然ならそのままで輝くはずなのに、最初から最後まで人の手を加えないと輝くことができないのが養殖です。天然と養殖とは言葉以上に開きのあるものなのです。
残暑厳しい折なのに熱く語ってしまい申し訳ありません・・・。決して養殖真珠を批判しているのではなく、天然真珠の価値や良さをもっと知ってもらえたらと思ったんです。
僕自身は大きな真珠よりも小さくてかわいらしいシードパールや変わった形のバロック真珠に心ひかれます。こちらはロンドンで手に入れたもので、数あるアンティークの中から迷わず真っ先に僕の心に入ってきました。真珠と金ってどうしてこんなにもお互いを高め合える二人なのでしょうね。人と人との関係も、ぜひそうでありたいものです。
シードパールのアンティークブローチ
イギリス、1860年代
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